相続には土地などの不動産が含まれることが多くなっています。
不動産を相続者全員で平等に分割する場合、まず基本となるその土地の評価額を算出しなくてはなりません。
相続における税には決まった計算方法があり、「路線価による評価額」及び「固定資産税評価額」を使った評価額が起用されますが、その反面、相続する際の土地の評価額には一定の基準が設けられていません。
いくつかの考え方があります。
まずはその辺りから見ていくことにしましょう。
土地の価格は、売り手や買い手によって考え方が大きく変わります。
売り手はより高く売りたいと思い価格を高く設定しますが、買い手はより低い価格を望みます。
このように土地の評価額はケースに応じて大きく変化してしまうのが一般的です。
もちろん公的に税などを納める際には算出するために用いる土地評価額の基準がありますが、これら土地の評価額をまとめて一物四価と呼んでいます。
一物四課には実勢価格、公示価格、路線価、固定資産税評価額の4つの土地評価額があり、税金を納める場合を除けば、どの評価を使っても問題ないとされています。
・実勢価格
実勢価格とは実際に売却などをする際に成立する価格のことです。
他の評価額と比べ最も高い金額となります。
・公示価格
国土交通省が毎年1月1日に提示している全国標準地の価格のことです。
不動産鑑定士の評価を加味し、国土交通省が公示価格を割り出します。
公用の土地の取得時に参考としているものですが、一般の土地でも価格を決める目安としています。
実勢価格と比べ10%ほど低い評価となりますが、土地取引などにはこの価格が指標となります。
・路線価
国税庁が毎年1月1日に決める土地の評価額で、相続税などはこの価格に基づいて計算されます。
土地が面している道路に割り当てられている1平方メートル当たりの価格を路線価と言いまが、その価格に土地の広さを乗じて計算していきます。
実勢価格よりも20%から30%ほど低くなります。
・固定資産税評価額
各自治体が毎年1月1日時点で定める土地の価格で、3年ごとに見直され、固定資産税や不動産取得税の算出に用います。
土地の所在する市町村の税務課にある台帳や固定資産税の納税通知書で確認することができます。
実勢価格より30%から40%ほど低くなっています。
相続の際に用いられるのは、この一物四価の中でも、実勢価格と路線価の2つです。
実勢価格は市場価格と最も近い評価であるため、公平に分配できるとあって、相続分割で裁判になった時などにも広く使われていますが、実質、相続税が高くなってしまうこともあり、それ以外で使う方は少ないのが実情です。
一般的には路線価にて計算する方法がとられています。
その計算方法をわかりやすく説明していきましょう。
相続した土地の評価額を計算する場合、宅地、山林、田畑など土地の項目ごとに、路線価を用いて算出していきますが、路線価はどの地域においても基準が設けられているわけではありません。
場合によっては、固定資産税評価額を用いた倍率方式でも算出することがあります。
路線価が定められている地域においては、この路線価で評価額を算出していきます。
路線価は、路線(道路)に面した1平方メートル当たりの価格帯が決められていますので、国税庁のHPの「路線価図」で割り出していくと良いでしょう。
都道府県、市町村ごとに絞っていくことができますので、それに従い土地の評価額を見ていきましょう。
各道路に書かれている基準を見てください。
「215」などと表示されています。
この数字は1000円単位となっていますので、この場合21万5千円となります。
数字の後にアルファベットが表示されているケースもありますが、これは借地の場合に適用される割合を示したものですので、相続の場合には使用する必要はありません。
これに土地の広さをかけ評価額を割り出します。
100平方メートルですと2150万円と言うことになります。
路線価が設定されていない土地の場合、倍率方式で算出します。
固定資産税の納税額に一定倍率を乗じて計算します。
通知書に記載してある記載されている基準年度の固定資産税評価額に国税庁のHPの「評価倍率表」を参照し、土地の区分ごとに定められた市町村ごとの倍率を用いましょう。
固定資産税の評価額は3年ごとに改定されていますので、納税通知書が見当たらない場合や基準年度の評価額が分からない場合には、土地の所在地の自治体税務署に確認して計算してみると良いでしょう。
例えば、固定資産税評価額が3000万円の土地で、評価倍率が1.1の場合、3300万円と言うことになります。
※国税庁HP http://www.rosenka.nta.go.jp/
土地の路線価は、標準的な奥行と間口の距離の宅地で一方だけ道路に面している土地に適用されているものです。
しかし、土地の形状はお決まりのものばかりではありません。
そのような場合、既定の路線価を調整して、評価にできるだけ忠実な額を導く必要があります。
補正率や加算率を合わせて、計算していきます。
これを画地調整と呼んでいます。
次のような補正、加算の計算となります。
・奥行価格補正
奥行きが長かったり、短かったりする宅地の場合、住宅の利用価値が低いとみなされるため、評価額も低くなってきます。
奥行き価格補正率を路線価に乗じることで1平方メートル当たりの評価額を補正していきます。
路線価×奥行価格補正率×土地の面積=評価額で算出します。
・間口狭小補正
土地の間口が狭い土地も、奥行きが長かったり短かったりするのと同様、利用価値が低くなってしまうため、評価額を下げて評価額とします。
路線価×間口狭小補正率×土地の面積=評価額で計算します。
・奥行長大補正
奥行が間口の倍以上ある土地には、奥行価格補正率に加え、奥行長大補正率を乗じて評価額を算出します。
路線価×奥行価格補正率×奥行長大補正率×土地の面積=評価額となります。
・がけ地補正
土地の一割以上に傾斜30度以上のがけがある場合も土地の評価額が下がるため、がけ地補正率をかけて計算します。
がけ地補正率は、まずがけ地の割合を出すところから計算します。
がけ地割合=がけ地面積÷総面積となります。
がけの方角と合わせ、がけ地補正率が正確に分かりますので、路線価×がけ地補正率×土地の面積=評価額の式に当てはめ算出します。
・側方路線影響加算率
一方だけ道路に面している土地よりも、角地など道が正面と側方にある土地は利用価値が高いため、評価額が加算されます。
このような土地の計算式は、正面、側方にある道路の路線価の合計で計算します。
1.正面路線価×奥行価格補正率
2.側面路線価×奥行価格補正率×側方路線影響加算率を合計し、
(1+2)×土地の面積=評価額となります。
・二方路線影響加算率
側方路線影響加算率同様、前後二方向に道路が面している場合も側方に道路がある時と同様の加算率が適用されます。
1.正面路線価×奥行価格補正率
2.裏面路線価×奥行価格補正率×二方路線影響加算率を合計し、
(1+2)×土地の面積=評価額となります。
・不整形地補正率
不整形地いわゆる欠けていたり、三角地であったりして、長方形や正方形と言った整形地と異なる土地のことを言います。
建物を建設する際にも利用価値の低い土地と言うことになりますので、評価額が下がることになります。
評価額を算出するには、まずかげの割合を計算します。
かげとは、つまり本来成型地とした時に欠けている部分の割合のことです。
(想定整形地の面積(地積)-不整形地の面積)÷ 想定整形地の面積で割り出すことができます。
地積区分表から土地がA、B、Cのどれに相当するのかを知った上で、かげの割合を比較し、不整形地補正率を参考にします。
路線価×奥行価格補正率×不整形地補正率=評価額となります。
同じ路線価でもこの補正を採用することで土地の評価額は大きく変わってきますので、画地調整は必ず行うようにしましょう。
土地の評価額を算出することは少々面倒ではありますが、以下の手順を守っていけば、必ず計算できます。
その手順を再度おさらいしておきましょう。
1.路線価の評価額を調べる
2.画地調整に当てはまる補正率を調べる
3.路線価と画地調整の補正率を用いて、土地の評価額を算出する
以上の手順を踏まえ、土地の相続に必要となる正しい評価額を算出していきましょう。